○○さんへ


プロジェクトが殆どの場合、期日どおりに終わらない理由って分かりますか?
殆どの場合、スケジュールに無理があるからです。景気回復とか言われていますが、ソフトウェア業界はまだまだ厳しくて、最近では予算も少なく期間も短い案件は当たり前になってきました。精度の高い見積りを、といった言葉もよく聞かれますが、受注を獲得する為だけの「戦略的価格」といったものが飛び交うケースもありますし、そもそも見積もりも正しいかどうか不明瞭です。

見積りが昨今、人日や人月という単位で行われる事が多いですが、「誰の場合の人日」なのか意外と誰も気にしないようです。誰がやっても同じ日数がかかるのであれば正しい見積りといえますが、この業界では技能のレベルによって生産性は劇的に変わりますので、恐らく日数での正しい見積りは出せません。
この見積りで受発注が行われているので、スケジュールが正しくならない事も多いと思います。


では、どうやっても成功しないかと言いますと、この視点はちょっと違います。(結果的にはどうあれ)成功させるように工夫をするのがエンジニアであり、エンジニアとして生業を立てている自分たちの使命です。翻ってマネジャーの使命は、失敗した時のコストをどれだけ小さくするか、という点にあります。

自分が最初に、プロジェクトに必要なものは技術だと書きました。これは、無理のあるスケジュールで発足したプロジェクトに対して、自分らエンジニアはそれでも成功に向けてのアプローチをする為の方法、つまり技術を駆使していくべきだと考えたからです。


恐らく今後、十分な期間、十分な予算で発足するプロジェクトなんてほぼ無いでしょう。そういうときに、「お金をもぎ取ってこれない営業がバカだからだ」とか「時間が無いんだから仕方が無い」とか、そういう言い訳をしていては、何も解決しません。成功しなくてもせめて反省、あわよくば成功させていかないと、失職も時間の問題です。


エンジニアは基本的に時間をかけたがる傾向があります。自分もです。
でも、仕事としている以上期限は必ずありますし、それに対しての甘えを正当化する事は間違いなく存在しません。限られた時間内に出来る事は当たり前ですが制限されます。そこで、「時間が無いから〜」と思考を停止させるのではなく、「こうしないと成功しない」等の見方をしないと良い仕事は難しいと思います。

偉そうでたいへん心苦しいんですが、少しでも伝われば幸いです。

以上、私信終わり。